父の窓口支払いは約4万円でした──その高額療養費制度が2026年8月から変わります【年収別・改正前後の比較表つき】

保険


こんにちは!

「高額療養費が改悪されるらしい」
SNSやニュースで、そんな言葉を見かけて不安になっていませんか。

私の父は、大腸がんの治療でこの制度に実際に助けられました。総額約170万円の治療費に対して、窓口で支払ったのは約4万円。この制度がなかったらと思うと、今でも少し怖くなります。だからこそ、「上限が引き上げられる」というニュースは、私にとって他人事ではありませんでした。

ただ、「改悪」という言葉だけで不安をため込むのは、危ういと思うんです。不安に押されて必要以上の保険に入ってしまったり、逆に「どうせ制度は当てにならない」と備えること自体をやめてしまったり。どちらも、家計にとっていい結果になりません。

実際の改正内容を数字で見ると、印象は変わります。あなたの年収でいくら変わるのか。何が据え置かれたのか。新しくできた仕組みは何か。数字で見れば、不安は「漠然とした恐怖」から「計算できる数字」に変わります。

この記事を読むと、こんなことがわかります。

・2026年8月の改正で、何がどう変わるのか
・あなたの年収なら、月の上限がいくらになるのか
・制度が効かないお金に、どう備えるか

さあ、一緒に学んでいきましょう。


まずは30秒でおさらい──父の治療費170万円、窓口で払ったのは約4万円

まず、前提のおさらいだけ手短に。

父が大腸がんで入院したとき、総治療費は約170万円でした。それでも窓口での支払いは約4万円。年金暮らしの父は所得の低い区分(住民税非課税の区分)にあたり、月の自己負担の上限が35,400円。そこに入院中の食事代が加わって、実際の支払いは約4万円になった…という内訳です。

これを可能にしているのが、高額療養費制度です。仕組みはシンプルで、医療費はまず3割負担、それでも高額になったら「月の上限」でストップがかかる、という二段構え。上限額は年収で決まります。

制度の詳しい仕組み、限度額適用認定証のこと、そして私がこの経験を経て医療保険を解約した判断。その全貌は、前作にすべて書きました。まだの方はそちらからどうぞ。

その制度が、2026年8月から変わります。


2026年8月、何が変わるのか──改正の全体像

変わる点は、大きく4つです。

  1. 月の自己負担上限額が引き上げ(全所得区分)
  2. 多数回該当は据え置き(長期治療の人への配慮)
  3. 年間上限が新設(これも長期治療の人への配慮)
  4. 2027年8月に第2段階(所得区分が5区分から13区分に細分化)

つまり、「上限は上がる。ただし、長く治療する人を守る仕組みは残す・増やす」という設計です。

なぜ変わるのか、背景にも触れておきます。高齢化や高額な新薬の登場で医療費が増え続けるなか、保険料を払う現役世代の負担を軽くする、というのが見直しの趣旨です。実はこの改正案、一度2025年に見送られた経緯があります。当初の案には患者団体などから「引き上げ幅が大きすぎる」という強い声が上がり、政府はいったん白紙に。その後、患者団体も参加した専門委員会で議論をやり直し、まとめ直されたのが今回の内容です。「多数回該当の据え置き」は、その議論の結果として残された配慮でもあります。

負担は増えます。でも、「医療費には月の上限がある」という制度の骨格は変わっていません。ここを押さえたうえで、数字を見ていきましょう。


あなたの上限はいくら上がる?──年収別・改正前後の比較

70歳未満の、月の自己負担上限額です。ご自身の年収の区分を見てください。

【区分ア】年収 約1,160万円〜
・〜2026年7月:252,600円+(医療費−842,000円)×1%
・2026年8月〜:270,300円+(医療費−901,000円)×1%

【区分イ】年収 約770万〜1,160万円
・〜2026年7月:167,400円+(医療費−558,000円)×1%
・2026年8月〜:179,100円+(医療費−597,000円)×1%

【区分ウ】年収 約370万〜770万円
・〜2026年7月:80,100円+(医療費−267,000円)×1%
・2026年8月〜:85,800円+(医療費−286,000円)×1%

【区分エ】年収 〜約370万円
・〜2026年7月:57,600円
・2026年8月〜:61,500円

【区分オ】住民税非課税
・〜2026年7月:35,400円
・2026年8月〜:36,900円

※式の中の「医療費」は、窓口で払う3割分ではなく、保険診療でかかった総医療費(10割分)です。

式だけではピンと来ないと思うので、実額で計算してみます。父と同じ「総医療費170万円の月」があったら、いくらになるのか。

区分ウ(年収約370万〜770万円)で計算過程を見せると、

85,800円+(1,700,000円−286,000円)×1%
=85,800円+14,140円
=99,940円

同じ計算を全区分でやった結果が、この表です。

例えば、
区分ウの年収約370万〜770万円なら「月+5,510円」で、
区分オの父と同じ住民税非課税なら「月+1,500円」です。

この数字をどう感じるかは、人それぞれだと思います。ただ、**「改悪で医療費が払えなくなる」という漠然としたイメージと、「170万円の治療を受けた月に、今より5,510円多く払う」**という実額とでは、ずいぶん印象が違うのではないでしょうか。**恐れるより先に、自分の数字を知る。**それがこの改正との正しい向き合い方だと、私は思います。


長期治療の人はどうなる?──「据え置き」と「年間上限」の意味

がんの治療は、1か月では終わりません。数か月、ときには年単位で続きます。父の治療を間近で見た家族として、今回の改正でいちばん注目したのはここでした。

多数回該当は、据え置かれました。

多数回該当とは、直近12か月で3回以上上限に達したら、4回目からは上限がさらに下がる仕組みです。この「下がった後の金額」は、今回の改正で変わりません。

・区分ア:140,100円のまま
・区分イ:93,000円のまま
・区分ウ・エ:44,400円のまま
・区分オ:24,600円のまま

つまり、区分ウの人ががん治療で4か月目に入ったら、月の上限は今までどおり44,400円。長く治療する人ほど、今回の改正の影響は小さい設計になっています。

さらに、年間上限という新しい仕組みができます。
※年間上限額は毎年8月から翌年7月までの12か月間の合計を対象とします。

これは、月の上限には届かない出費が続く人への救済です。たとえば通院治療で毎月数万円ずつかかる場合、月単位では上限に達しなくても、年間の自己負担の合計が上限に達したら、それ以降の負担は不要になります。**区分ウなら年間53万円。**これまで「月の上限にギリギリ届かない人」は守られにくかったので、新しいセーフティネットと言えます(区分ごとの金額の詳細は、政令で最終確定されます)。

なお、2027年8月には第2段階として所得区分が5区分から13区分に細分化されます。年収の高い層では上限がさらに上がる一方、年収200万円未満の方の多数回該当は44,400円から34,500円へ引き下げられる予定です。負担増だけでなく、引き下げもある。ここも「一律の改悪」ではない部分です。


手続きも変わっています──マイナ保険証なら認定証はもう不要

前作で「入院が決まったら、先に限度額適用認定証を申請しておきましょう」と書きました。ここも実務がアップデートされています。

**今は、マイナ保険証を使えば、事前の申請なしで窓口の支払いが最初から上限額で済みます。**病院の受付でマイナ保険証を使い、「限度額情報の提供」に同意するだけ。役所や健保への申請手続きは不要です。

従来型の限度額適用認定証も引き続き使えます。また、上限を超えて払ってしまった場合の事後申請(高額療養費の支給申請)の期限は、診療月の翌月1日から2年間です。過去の入院で「あれ、申請したっけ?」という心当たりがある方は、遡って確認してみてください。


制度が「効かない」お金──改正より先に知っておくべき実額

ここまで読んで、「思ったより増え幅は小さいな」と感じた方も多いと思います。私も同感です。ただ、正直に言うと、家計にとって本当に注意すべきは、改正で増える月数千円より、そもそも高額療養費が効かないお金のほうです。

入院中の食事代これは高額療養費の対象外で、2026年6月から1食550円に引き上げられました(物価高で近年、段階的に上がっています)。1日3食で1,650円。2週間入院すれば約23,000円になります。父の窓口支払いが、限度額35,400円ぴったりではなく「約4万円」だったのも、この食事代が乗っていたからです。

差額ベッド代個室や少人数部屋を希望した場合の追加料金で、全国平均は1日およそ6,000〜8,000円台。個室ならさらに高くなります。これも全額自己負担です。ただし知っておいてほしいのは、同意書にサインしなければ原則請求されないということ。病院の都合で個室に入る場合まで払う必要はありません。

先進医療の技術料陽子線治療や重粒子線治療などは保険がきかず、数百万円規模の全額自己負担です。ただし、こうした治療を受ける人はごく少数。「先進医療が怖いから保険に入る」の前に、まずこの事実を知っておいてください。

働けない間の収入減会社員なら傷病手当金(給与の約3分の2・最長1年6か月)がありますが、自営業・フリーランスにはありません。治療費そのものより、この収入減のほうが家計に響くケースも多いです。

制度が効かないお金にどう備えるか。基本は貯蓄で、足りない部分があれば最小限の保険で、というのが私の考えですが、ここは家庭の状況によって答えが変わるところです。


私の結論は変わりません──「まず制度を知る、保険はその後」

最後に、正直に自問自答してみます。前作で私は、父の件を経て医療保険を解約しました。今回の改正を踏まえても、その判断は変わらないのか?

結論、変わりません。

理由は、ここまで見てきた通りです。増えるのは月数千円〜1万円台の規模。多数回該当は据え置かれ、年間上限という新しい守りも増えた。「医療費には上限がある」という骨格は、揺らいでいません。だから私の場合は、改正分も含めて貯蓄で備える、という結論のままです。

ただし、これは「だからあなたも解約すべき」という話ではありません。家族構成も、貯蓄額も、働き方も、人それぞれ。大事なのは順番です。まず制度を知る。保険を考えるのは、その後。この順番だけは、改正後も変わらない鉄則だと思っています。

なお、医療保険だけでなく、火災保険・自動車保険・生命保険まで「家の保険ぜんぶ」を一度に見直したい方向けに、私の実体験と判断基準をまとめた有料noteを用意しています。無料記事が「制度と改正の解説」なら、こちらは「わが家の保険を横断で総点検するための道具」です。必要な方はどうぞ。


まとめ

今回のポイントを振り返りましょう。

  • 2026年8月から、高額療養費の月の上限が全区分で引き上げられる
  • 増える額は、総医療費170万円の月で「区分ウ+5,510円/区分オ+1,500円」という実額規模
  • 多数回該当は据え置き。長期治療の人ほど影響は小さい設計
  • 年間上限が新設され、月の上限に届かない出費が続く人にも守りができた
  • 2027年8月に第2段階(区分の細分化)。引き下げになる層もある
  • マイナ保険証があれば、限度額適用認定証の事前申請はもう不要
  • 食事代(1食550円)・差額ベッド代・先進医療・収入減は制度の対象外。本当に備えるべきはこの4つ

制度は変わります。でも、変わったことを数字で知っていれば、慌てる必要はありません。


最後に

今回の改正、あなたはどう感じましたか?「思ったより小さい」「やっぱり不安」。率直な感想や、医療費で実際に困った経験があれば、ぜひコメントで教えてください。

不安の正体は、たいてい「知らないこと」です。数字で知れば、備えは自分で選べます。

この記事が参考になった方は「スキ♡」をポチっと押していただけると嬉しいです。
これからもお金について、わかりやすく発信していきます。

ほなまた!


ひろマネー|3級FP技能士・投資歴5年
40代、大阪出身、沖縄移住2年目。
保険・年金・税金・社会保険・投資など「お金の教養」をわかりやすく発信中。