はじめに
「投資といえば株」というイメージ、なんとなく持っていませんか?
長期投資講座の5部作を最後まで読んでくださった方なら、もう「インデックスで世界中の株に長期投資する意味」は十分にご理解いただけたかと思います。
でも、ここまで読んで次にこう思った方も多いはずです。
「株がいいのは分かった。でも投資って、他には何があるの?」
投資の世界には株以外にもいろんな選択肢があります。今回はその全体像を、なるべくやさしく整理していきます。読み終わる頃には「ああ、投資の世界はこうなっているのか。でもやっぱり自分は株から始めればいいんだな」と、自分なりに納得できるはずです。
① 投資の世界地図 ─ 資産は大きく2つに分けられる
投資の世界には数えきれないほど商品があるのですが、整理するとだいたい2つのグループに収まります。
- 伝統的資産(Traditional Assets): 株・債券・現金
- オルタナティブ資産(Alternative Assets): 不動産・金・暗号資産・ヘッジファンドなど
「オルタナティブ」というのは英語で「もう一つの」「代わりの」という意味。要するに、伝統的資産じゃないその他全部くらいのざっくりした分類です。

図解:伝統的資産 vs オルタナティブ資産の比較表

図解:縦軸リスク/横軸流動性のマトリクス
ざっくり例えると、
伝統的資産=主食(ごはん・パン・麺)、
オルタナティブ資産=副菜(おかず・サラダ)です。
主食だけでも生きていけるし、副菜だけだと栄養は偏ります。バランスの取り方は人それぞれですが、まずは主食を知るところからです。
② 伝統的資産:投資の「主食」3つ
主食にあたる3つを順番に見ていきましょう。
株式:成長を取りに行く「ごはん」
株式は会社の一部を持つ権利のこと。会社が成長すれば株価も配当も増え、衰退すれば下がります。
- 期待リターン: 長期で年5〜8%程度(過去データ)
- リスク: 高い(短期では半値になることもある)
- 役割: 長期で資産を増やす中心
長期投資講座でお伝えしたように、株式は「ちゃんと長く持てば最強」の資産。ただし短期の値動きは荒いので、生活費を投じてはいけません。
債券:守りの中心「お味噌汁」
債券は、国や企業にお金を貸して、利息をもらう仕組み。
「貸す側」になる投資です。
- 期待リターン: 年1〜3%程度
- リスク: 低め(株より値動きが穏やか)
- 役割: ポートフォリオの安定剤
家計簿で例えるなら、株が「ボーナス頼みの収入」、債券は「毎月決まった給料」のイメージ。地味だけど、ポートフォリオの中で値動きを和らげてくれる縁の下の力持ちです。
現金(預貯金):流動性確保の「お水」
意外と忘れがちですが、現金も立派な投資ポジションのひとつです。
- 期待リターン: ほぼゼロ(普通預金で年0.001%レベル)
- リスク: ほぼゼロ(ただしインフレで実質目減り)
- 役割: いつでも使える生活防衛資金、暴落時の買い増し弾
「投資=リスクを取ること」と思いがちですが、現金を持つこと自体も戦略です。生活防衛資金(生活費の半年〜1年分)が確保できていないなら、まずはそこから。
③ オルタナティブ資産:投資の「副菜」
ここからは副菜の話。種類は多いですが、主要な4つを押さえれば十分です。
不動産・REIT:賃料収入+値上がり
実物の不動産を買う方法と、**REIT(リート)**という投資信託のような形で間接的に持つ方法があります。
REITは不動産を小口化した商品で、数万円から買えます。マンション一棟まるごとは買えなくても、商業ビルやオフィスの「持ち分」を少しずつ買えるイメージ。家賃収入の一部が分配金として戻ってきます。
初心者にはまずREITをおすすめします。実物の不動産は管理・修繕・空室リスクの手間が大きく、初心者がいきなり持つには重いからです。
コモディティ(金・原油など):インフレヘッジ
金(ゴールド)に代表される実物商品です。会社のように利益を生まないので、配当も利息もありません。価値が上がるか下がるかだけ。
ただし金には独特の役割があります。
- インフレに強い(モノの価値が上がるとき、金の価格も上がりやすい)
- 戦争や金融危機のときに買われやすい「有事の金」
- 株とは違う動きをすることが多い
「攻め」ではなく「守り」の資産です。金の投資信託やETFを使えば、実物の金を買わなくても証券口座から株と同じように買えます。
暗号資産:初心者は手を出さなくていい
ビットコインなど、いわゆる仮想通貨です。
正直に書きますと、初心者が最初に手を出す資産ではありません。
- 1日で10〜20%動くことが普通にある
- 株や金と違い、価値を支える「土台」がない
- 法整備や税制が今も変わり続けている
- そして新NISAの対象外
初心者のうちは、暗号資産には手を出さなくていいというのが私の考えです。もしいつか興味が出たとしても、それは主食と副菜が十分に育ったずっと先の話。今ではありません。
ヘッジファンド・PE(プライベートエクイティ):そもそも買えない
ニュースで「ヘッジファンドが〜」と出てきますが、結論から言うと個人投資家には買えません。
- 最低投資額が数千万円〜数億円
- 機関投資家や富裕層専用
- 一般人が「ヘッジファンド型」と銘打って買えるのは、似て非なる商品が多い
「ヘッジファンドは買えない・買おうとしないでOK」と覚えてもらえれば十分です。
④ なぜ2つに分けるのか ─「動きの違い」の話
ここまで読んで「いろいろあるのは分かったけど、結局なんで分けるの?」と思った方へ。
答えはひとつ。値動きの方向が違うからです。

図解:株と金の値動きの違いイメージグラフ
たとえばこんな関係があります。
- 景気が悪くなる → 株は下がる
- 景気が悪くなる → 金は買われやすい(安全資産として)
- インフレが進む → 株はマチマチ、不動産・金は上がりやすい
- 金利が上がる → 債券は値下がり、株もしばしば下がる
伝統的資産(特に株)は景気に正直に反応します。一方、オルタナティブ資産は別のロジックで動くものが多い。
これを混ぜると、ポートフォリオ全体の値動きが穏やかになるのです。
長期投資講座の第4回でお伝えした「資産が半分になる覚悟」の話を覚えていますか?あの覚悟をやわらげる役割を、副菜が担うわけです。
ただし、副菜だけで栄養は摂れません。主食(株)の成長エンジンがあってこその副菜だということは忘れずに。
⑤ 初心者の正解:まず伝統的資産から
ここまで全体像を見てきましたが、結論をはっきり言います。
初心者は、いきなり全資産クラスに分散する必要はありません。まずは伝統的資産、なかでも株式から始めるので十分です。
なぜそう言い切れるのか。実は私自身、ハイリスクな投資で痛い目に遭った経験があります。
私が「ハイリスク投資」で失った3つのもの
投資を始めた頃、私はFXに手を出していた時期があります。
「FXなら元手資金が少なくても稼げるかも」という甘い考えのもと、給料が入るたびに口座に入金。仕事中もスマホが気になって値動きチェック。朝起きて確認、昼休みに確認、夜寝る前にも確認。24時間ずっと頭の片隅にありました。
しかも、ポジションを取れば取るほど、なぜか反対方向に動く。気づけば資産はじわじわ溶けていく。
「これは勉強代」と自分に言い聞かせていましたが、本当にもったいなかったのは、お金よりも、奪われた時間と、削られた精神でした。
ギャンブルのような緊張感の中で、何時間も値動きを追い続ける日々。冷静に向き合っているつもりでも、気づけば多くの時間と気力をFXに使っていました。
そんな時期を経て、長期投資(インデックス)に出会ったときは衝撃的でした。
- 買って、放置するだけでいい
- 値動きを毎日見なくていい
- 夜もぐっすり眠れる
時間も精神も奪わず、コツコツとデータが示すリターンを積み上げてくれる。これこそが、長期投資の本当の価値だと実感。
だから初心者の方には、迷わず伝統的資産(株式インデックス)から始めることをおすすめします。
配分の目安は6:3:1
迷ったら、次の配分を目安にしてください。

図解:6:3:1のパイチャート
注釈:迷ったらまずはこの比率。オルタナは0%でもOK
- 株式 60%(主食)
- 債券 30%(味噌汁)
- オルタナ 10%(副菜)
もしくは「オルタナ 0%でもOK」です。実際、長期投資講座の主役だった全世界株インデックス1本だけでも、20〜30年スパンで見ればしっかり育ちます。
なお、**この6:3:1はあくまで目安です。年齢によって調整するという考え方もあり、よく知られているのが「債券の割合=年齢」**というルール。たとえば40歳なら債券40%、株式60%。若い人ほど株式を多め、年配の人ほど債券を多めにして、リスクを取れる時間に合わせる、という発想です。
新NISAでの取り扱いも整理しておきましょう。
株式(個別・投信・ETF):◯
債券(投信経由):◯
REIT(J-REIT・海外REIT):◯
金ETF:◯
暗号資産:✕(対象外)
つまり、ほとんどのオルタナは新NISAでも買える。「NISAだから株しか買えない」と思っていた方は安心してください。
実際、私も投資を勉強し、長期投資を始めた頃は「オルカン(全世界株)」と「S&P500(米国株)」のどちらが良いか分からず、両方を均等に買っていた時期がありました。
その後、勉強を重ねて「オルカンの方が枕を高くして眠れる」と判断し、今はオルカンを中心に積立しています。
REITはつい最近、ごく少額を買い始めたばかりです。
つまり、最初から完璧な分散を目指す必要はないということです。
⑥ オルタナティブをやるなら、どこから?
「副菜も少し加えたい」という方向けに、現実的な順番をお伝えします。
STEP 1: REIT(J-REIT・海外REIT)
最初の一歩としてはREITがいちばん入りやすいです。
・数万円から買える
・分配金が定期的に入る
・新NISAの対象
・楽天証券・SBI証券で普通の投信と同じように購入可能
J-REIT(国内)と海外REITのどちらにも、低コストのインデックス投資信託があります。金ETFと同じく、長期保有なら信託報酬の低いものを選ぶのが基本です。
STEP 2: 金ETF
インフレ対策として少しだけ加えるならこちら。
・金価格に連動するETFを、証券口座から株と同じように買える
・配当はない(値上がり益のみ)
・金ETFは複数あるので、長期保有なら信託報酬(保有コスト)の低いもの を選ぶのが基本
金は**「持っていても増えないけど、減らない保険のような資産」**として考えるのが正解です。私自身は今のところ金は持っていません。まずは伝統的資産を厚く育てる時期だと考えているからです。
STEP 3: 暗号資産は今やらなくていい
③でもお伝えしたとおり、初心者のうちは暗号資産に手を出す必要はありません。値動きが激しく、新NISAの対象外で非課税にもならないため、長期投資の主軸にはなりえません。 「副菜を増やしたい」という気持ちは、まずはREITで満たすのが安全です。
まとめ

まとめの図解
今回のポイントを振り返りましょう。
- 投資の世界は伝統的資産(主食)とオルタナティブ資産(副菜)の2つに分けられる
- 主食は株・債券・現金の3つ。長期で資産を育てる中心は株
- 副菜は不動産・金・暗号資産など。値動きが違うので分散効果が出る
- ヘッジファンドは買えない・買おうとしないでOK
- 初心者の正解はまず伝統的資産から。オルタナは6:3:1の比率で「1」ぶんあれば十分
- 加えるならREIT → 金ETFの順。暗号資産は初心者のうちはやらなくていい
主食をしっかり、副菜は気が向いたら。これだけ覚えておけば、投資デビューに迷いはなくなります。
最後に
投資の世界は、知れば知るほど「シンプルでいい」と分かるものです。最初からあれもこれも揃えなくていい。まずは主食(全世界株インデックス)から。そして余裕が出てきたら、副菜を少しずつ。
私自身、FXで時間も精神も削った経験があるからこそ言えます。長期投資の良さは**「放っておけること」**です。夜ぐっすり眠れる投資が、結局いちばん続きます。
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ほなまた!
【筆者プロフィール】 ひろマネー|3級FP技能士・投資歴5年の40代で大阪出身、沖縄移住2年目。 保険・年金・税金・社会保険・投資など「お金の教養」をわかりやすく発信中。