傷病手当金、あなたの月収ならいくら?〜会社員がすでに持っている「最大360万円」の保障【月収別早見表つき】〜

保険


こんにちは!

「もし病気で3か月働けなくなったら、家のお金はどうなるんだろう」

就業不能保険のCMを見て、そんな不安がよぎったことはありませんか。

実はこの問いへの答えは、あなたが会社員かフリーランスかで、まったく違います。

会社員には、給料の約3分の2を最長1年6か月支えてくれる「傷病手当金」という公的な保障があります。
一方、フリーランスや自営業にはありません。

ネットで調べればすぐ出てくる制度なので、会社員なら「給料の何割かが、しばらくもらえるらしい」と、うろ覚えの人が多いと思います。フリーランスや自営業の方は、この保障がないことを承知の上で独立された方がほとんどでしょう。ただ、「だいたい知っている」と「自分の数字で答えられる」の間には、備えの判断を左右するくらいの差があります。

この不安、放置するとどうなるか。保障の中身が曖昧なまま不安だけが残ると、勧められるまま保険に入って、月々の固定費が増えていきます。逆に「なんとかなるだろう」と何も調べずにいると、いざ休職したとき、申請の手続きや期限を知らずに、もらえるはずのお金を受け取り損ねる。どちらも、もったいない話です。

でも、仕組みを知れば、「月収30万円なら月約20万円が、最長1年6か月」という自分の数字が出せます。不安は「漠然とした恐怖」から「計算できる数字」に変わり、保険が必要かどうかも、自分で判断できるようになります。

この記事を読むと、こんなことがわかります。

  • 傷病手当金が、いくら・いつから・いつまでもらえるか(月収別早見表付)
  • 申請・待期・退職まわりの「知らないと損する」ポイント
  • 会社員とフリーランスで、備え方がどう違うか

さあ、一緒に学んでいきましょう。


傷病手当金とは?〜働けない間、「給料の約3分の2」が出る健康保険の給付〜

毎月の給与明細から、しっかり引かれている健康保険料。あの保険料の対価は、病院の窓口が3割負担で済むことだけではありません。病気や怪我で働けなくなったとき、給料の代わりに現金が支給される。それが傷病手当金です。保険料を払っているのに、この給付を知らない。それは、掛け捨ての保険に入っているのに保険金の請求方法を知らないのと同じくらい、もったいないことです。

もらえる条件は、4つ揃った時です。

  1. 業務外の病気・けがで療養していること(仕事中・通勤中のけがは労災保険の担当)
  2. 仕事に就けないこと(労務不能。医師の意見と仕事の内容から判断されます)
  3. 連続する3日間(待期)のあと、4日目以降も休んでいること
  4. 休んだ期間について給与の支払いがないこと(給与が出ていても、傷病手当金の額より少なければ差額が出ます)

対象は、健康保険の被保険者である会社員・公務員です(協会けんぽ・健康保険組合・共済組合)。パート・アルバイトでも、勤務先の健康保険に入っていれば対象です。

一方、フリーランス・自営業が入る国民健康保険には、この給付が原則ありません。ここはこの記事の後半で、じっくり書きます。

なお、病気のときのお金の心配は、大きく2つに分かれます。**出ていくお金(治療費)**と、入ってこなくなるお金(給料)。治療費のほうは「高額療養費制度」で月の上限が決まる、という話を前回の記事で書きました。

今回はもう片方の止まってしまう給料の話です。

この「働けなくなったら」というテーマは、治療費 → 給料 → 長期化したときの生活、と3本の記事に分けて書いていきます。それぞれの守備範囲を図にまとめました。


いくらもらえる?〜月収別早見表【この記事の主役】〜

計算式は、1行で書けます。

1日あたりの支給額
= 支給開始日以前12か月間の標準報酬月額の平均 ÷ 30日 × 3分の2

「標準報酬月額」とは、社会保険料の計算に使う、月収の目安を等級で区切った金額のことです。給与明細に載っている会社もありますが、見当たらなければ勤務先の総務・人事か、加入している健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)に確認できます。

月収30万円の人で、計算してみましょう。

30万円 ÷ 30日 = 1万円(1日あたりの給料の目安)
1万円 × 2/3 = 日額 約6,667円
30日分で → 月 約20万円

同じ計算を月収別にまとめたのが、この早見表です。ご自身の月収の行を見てください。

**月収30万円なら、総額で最大約360万円。**この規模の保障を、会社員のあなたはすでに持っています。就業不能への備えを考えるとき、まずこの土台を知ってからというのが、順番だと私は思います。

ただし、正直な注意もセットで。支給されるのは給料の3分の2で、ボーナスは標準報酬月額に含まれません。つまり年収ベースで見ると、減り方はもっと大きくなり得ます。しかも、休職中も社会保険料や住民税の支払いは続くので、手取りの感覚では「3分の2」より厳しく感じる場合があります。

「傷病手当金があるから安心」ではなく、「傷病手当金でここまでは埋まる。足りない分をどうするか」と考えるのが現実的です。

※なお、早見表にない月収の方や、自分のケースでより正確に計算したい方は、こちらの計算ツールが便利です。標準報酬月額と休んだ日数を入れるだけで、支給額の目安が出ます。

傷病手当金の支給額の計算 傷病手当金の支給額を計算します。被保険者が病気やケガのために会社を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に健康保険か keisan.site


いつから、いつまで?〜待期3日と「通算1年6か月」〜

【いつから】
休み始めて「連続3日間」の待期が成立したあと、4日目から支給対象になります。

この待期3日、数え方に癖があります。

・有給休暇・土日・祝日を含めてOK(給与が出ているかは問いません)。

・ただし「連続3日」が条件。「2日休んで1日出勤して、また休んだ」は連続にならず、数え直しです

【いつまで】
支給開始日から通算して1年6か月です。

この「通算」という言葉、実は2022年1月の改正で変わった大事なポイントです。以前は「暦の上で1年6か月」で、途中で復職した期間も含めてカウントされていました。

今は実際に支給を受けた日だけを足し算します。

つまり——

入院で3か月休む → 復職して働く → 再発してまた休む

というがん治療のようなケースでも、**復職していた期間はカウントされず、残り1年3か月分をまた使えます。**治療と仕事を行き来する人にとって、大きな改正になりました。

では、通算1年6か月を使い切っても、まだ働けなかったら?

そこで登場するのが障害年金です。

病気とお金の話は、①治療費の負担を抑える「高額療養費」(前回の記事)、②止まった給料を支える「傷病手当金」(この記事)、③それでも長引いたときの「障害年金」という三部作で書いています。第3弾の障害年金は、次の記事で詳しくお届けします。


知らないと損する3つのルール

制度を知っていても、ここを知らないと受け取り損ねます。
3つだけ、覚えて帰ってください。

① 申請しないと、1円ももらえない

傷病手当金は、自動では振り込まれません。申請書には本人の記入欄・会社の記入欄・医師の意見欄があり、給与の締めに合わせて1か月ごとに申請するのが一般的です。申請先は、加入している健康保険(協会けんぽ・健保組合)。

救いは、時効が2年あること(休んだ日ごとに進みます)。

「そんな制度知らなかった……」という過去の休職も、2年以内なら遡って申請できます。

② 有給・給与との調整を知っておく

待期3日は有給で埋めて構いません(むしろ一般的です)。4日目以降は、給与(有給含む)が出ている日には支給されず、給与が日額より少なければ差額が出ます。「まず有給を使い、それから傷病手当金へ」が一般的な流れですが、会社独自の休職制度(給与補償)がある場合もあるので、就業規則の確認が先です。

なお、障害厚生年金や出産手当金を受けられる場合は、同じ期間に両方を満額もらうことはできず、原則どちらか一方(金額の高い方の水準)になる調整があります。

③ 退職後も続く。ただし「退職日」に最大の落とし穴がある

あまり知られていませんが、退職しても、次の両方を満たせば残りの期間を受け続けられます(継続給付)。

**・退職日までに継続して1年以上、健康保険に加入していたこと

・退職日の時点で、傷病手当金を受けているか、受けられる状態(待期成立済みで労務不能)であること**

そして、ここが最大の落とし穴。退職日に出勤すると、この継続給付が受けられなくなります。

「最終日だから、挨拶と引き継ぎだけでも」
その1日の出勤で「働けない状態」の条件が崩れるためです。

月20万円×残り期間なら、数百万円規模の給付が消えることすらあります。

療養で退職する方は、退職日は出勤しない。

これだけは覚えておいてください(細かい運用は、加入先の健康保険に確認を)。

なお、退職後は会社の健康保険に最長2年入り続けられる「任意継続」という制度がありますが、これで続くのは医療費の保障(3割負担や高額療養費)だけ。任意継続中に新しく病気になっても、傷病手当金は出ません。

退職後に受けられるのは、上の2つの条件を満たした継続給付だけです。


フリーランスには、ありません〜会社を辞めた日に、ゼロになる保障〜

会社員は、傷病手当金を「知らないうちに持っている」ことがほとんどです。給与明細の健康保険料を「病院の窓口が3割負担で済むためのもの」と思っていて、その対価に「働けないときの月20万円級の保障」まで含まれていると意識している人は、多くありません。

そして、会社を辞めて国民健康保険に切り替えると、その日から傷病手当金はゼロになります。国民健康保険には、この給付が原則ないからです(一部の国保組合には独自の給付がある場合があります)。

独立する人の多くは、このこと自体は承知しています。ただ、手放す保障の大きさ、月収30万円なら「月約20万円×最長1年6か月、総額約360万円分」を数字で見積もったうえで、その穴をどう埋めるかまで設計してから独立した人となると、ぐっと少なくなるはずです。

だから、両方の立場に伝えたいことがあります。

会社員のあなたへ。
あなたは今、月収30万円なら「月約20万円×最長1年6か月」の保障を、すでに持っています。それを知らずに就業不能保険や医療保険を上乗せするのは、順番が逆かもしれません。まず、持っているものを数えてから。

フリーランス・自営業のあなたへ。
傷病手当金は、ゼロです。会社員の友人と同じ感覚で「なんとかなる」と構えるのは危険で、備えの設計が根本的に違います。働けない期間の生活費は、基本的に自分の蓄えで支えることになる。この前提から始める必要があります。

会社員と自営業で、保障がどこまで違うのか。全体像はこちらの記事で比較しています。


では、どう備える?〜会社員/フリーランス別・やることリスト〜

備えの順番は、こうです。

①公的保障を知る(この記事)→ ②足りない分を計算する → ③貯蓄か最小限の保険で埋める。

立場別に、やることを整理します。

会社員のやることリスト

・自分の標準報酬月額を確認する(給与明細・勤務先の総務・加入している健康保険)

・早見表で、自分の月額(給料の約3分の2)を出す

・就業規則で、会社独自の休職制度・給与補償の有無を確認する

・「休職中も出ていくお金」(住居費・保険料・住民税など)を書き出す

・そのうえで、就業不能保険・医療保険が本当に必要かを判断する

フリーランスのやることリスト

・「傷病手当金ゼロ」を前提に、生活防衛資金を厚めに持つ(自営業は生活費の半年〜1年分が目安)

・加入している国保組合に、独自の傷病給付がないか確認する

・働けないリスクの保険は、「入る前提」ではなく「足りない金額を計算してから」検討する

働けないときの公的保障がいくらあるか。ここまで計算できたら、次は「いま入っている保険は、本当に必要か」です。

医療保険・就業不能保険だけでなく、火災保険・自動車保険・生命保険まで「家の保険ぜんぶ」を実額で見直す手順を、私の実体験と判断基準ごとまとめた有料noteを用意しています。

この記事が「公的保障を知る」の回なら、キットは「家全体を横断で見直す」ための道具です。


まとめ

今回のポイントを振り返りましょう。

  1. 傷病手当金は、働けない間「給料の約3分の2」が出る健康保険の給付。支給期間は通算1年6か月
  2. 月収30万円なら月約20万円・総額最大約360万円。会社員はこの保障をすでに持っている
  3. 支給は「連続3日」の待期のあと4日目から。有給・土日を含めてよいが、連続でないと数え直し
  4. 申請しないと1円ももらえない。時効は2年、遡り申請も可能
  5. 退職後も条件を満たせば続く。ただし退職日に出勤すると継続給付が消える
  6. 国民健康保険には原則ない=フリーランス・自営業はゼロ。備えの設計が根本的に違う
  7. 備えは「公的保障を知る → 足りない分を計算する → 貯蓄か最小限の保険で埋める」の順番

そして、続きがあります。傷病手当金が終わる1年6か月後の、その先。

長期で働けないときを支えるのが「障害年金」です。

次の記事で、いくら・どんな条件でもらえるのかを詳しく書きます。

「働けなくなったら」の三部作、最終回もお楽しみに。


最後に

あなたの月収だと、傷病手当金はいくらになりましたか?

早見表を見ての感想や、「実際に使ったことがある」という体験談、「ここがわかりにくい」という疑問など、ぜひコメントで教えてください。

働けなくなる不安は、ゼロにはできません。でも、支えてくれる制度の名前と金額を知っていれば、不安と一緒に暮らす必要はなくなります。

この記事が参考になった方は「スキ♡」をポチっと押していただけると嬉しいです。
これからもお金について、わかりやすく発信していきます。

ほなまた!


ひろマネー|3級FP技能士・投資歴5年
40代、大阪出身、沖縄移住2年目。
保険・年金・税金・社会保険・投資など「お金の教養」をわかりやすく発信中。